保護者向け

医者である前に、“人”を育てる予備校を創りたい

なぜ医学部専門の予備校を設立したのかと、よく聞かれます。
私のやっていることは、一言で言えば、子供たちの幼い殻を破ることです。
そして、他人に優しくできる、本当の成人の強さを身につけさせることです。
確かに医者はそうした人間であってほしい。
しかし、それは医者に限ったことではありません。

ある時、ひょんなきっかけで、医学系大学で1年間教えることになった時のことです。
生徒たちの質問を受けます。
なんとなく医学部生には興味があるので、観察していると、その質問が本当に稚拙なことにだんだんと腹が立ってきたのです。
しかも、会話をしていても情けない。

次第に「こいつら本当に医者になるのか?」と思うようになっていました。
「なぜこいつらが医者なの?」と。

予備校で教えている時も、同じ気持ちになりました。こんなやり取りもありました。
「君も医学部を狙っているのか?君のところは何をやっているの?」
「開業医だよ」
「君みたいに遊んでばかりいる人間がどうして医者になりたいと思うの?」
「別に、特にないよ。あ、そうだ。儲けて馬主になるんだ」

別の女子学生は、「テレビに出ている女医みたいに儲ける!」

あるいは他の学生は「女にモテたいから!」

そういう学生たちが医学部に合格していくのです。
「医者がこのレベルでいいのか? よし、俺がこいつらを叩き直してやる」
とそう思っていたのは確かです。

意識していたわけではないですが、だからこそ人から尊敬されるような医者を育てたいと思ったのだと思います。
もう1つのきっかけはやはり医学部専門予備校のデタラメさです。
医者に対する不信感もあります。
だから、母親がガンになった時も、下手な医者にはかかりたくないと思って、それでがんセンターに連れていったのです。

皆も同じだと思います。
少なくとも近所の開業医は当てにならないから、せめて大学病院に行こうという風潮が強いのも同じ理由だと思います。

それでいいわけはありません。
もっと地域医療が頼りになるものにならないと、これからの超高齢社会は立ち行かなくなってしまいます。

医者になることを安易に考えてほしくはありません。
医者の息子は最初から医者だなどとは思わないでほしい。
今や世の中全体が倫理観を求めています。
医者の倫理観も同じです。
入試問題でも面接でも、倫理観を突く問題や質問が出されています。

時代は確実にその方向に進んでいるのです。

成績なんかで人は判断できない

あえて暴論を述べましょう。

立場を忘れるのであれば、ストレートで大学に受からないほうがその子のためになる。
人間形成もできずに、甘い職業意識を持ったままで、楽をして医者になってしまえば、正直、ろくな医者にはならない。

むしろ「失敗しろ」と思う場合もあります。
苦労は自ら買ったほうがいい、買わなくてはいけないものなのです。
まあ、「失敗しろ」は言いすぎでも、とにかく「苦労を厭うな」は口癖になっています。

全体の1割という引きこもりなどの問題児(もっとも、その子よりも親のほうに問題がある場合が多いのですが)、また下地がないので、合格は1年では到底、無理という子供たちのことについて中心に語ってきましたが、優秀な子も優秀な子で、問題はあるものです。
これも面接の練習ですぐに明らかになります。

よく言う口癖は、「君はこんなに成績がいいのに、なぜ物事の一面しか見ないのだ?」というものです。多くは人間性の問題です。

ただ、賢い人間は、こちらの言っていることを理解すれば、反省も早いものです。
「そうか」の一言で、わかり合えることも少なくありません。

優秀な人間はどこに行っても受かります。
医学部に合格して、医師資格を獲得して、医者になるでしょう。
だからこそ、今のうちに是正すべきところは是正してほしいのです。
そして、そうすることによって理解したその〝心意気〟をずっと持ち続けてほしいのです。

そのために、私は頑張っているのです。

確かに、そんなことが実現できる、型破りな予備校はそうはありません。
経済原則とも相容れないし、競争社会を勝ち抜くという1点だけで判断すれば、無駄が多いかもしれません。
しかし、若者がよりよい医療業界を築き、よりよい日本社会を創り上げていってほしいと思う気持ちを捨てるわけにはいきません。

教育機関は、試験に合格させるためだけの機関ではなく、広く人間形成を行い、立派な〝市民〟を育てるための機関であるべきです。
予備校といえども、そうした教育機関の一翼を担っているという気持ちを私は忘れません。

営利企業ですが、場合によっては私財をなげうってでも、育てるべき子供たちを育てたい。
本気でそう思っています。
だから、失敗することを恐れない、失敗から大事なものを学ぶことのできる人間に育ってほしいのです。
失敗を恐れてしまえば、決してチャレンジなどできません。

生徒が医学部に合格して当校を卒業する際には、いつも涙が出ます。
医学部に合格できただけではなく、人間的に成長した彼らを見るのが一番うれしいのです。

一番問題なのは、親であり、義務教育の教育機関です。
事なかれ主義が横行して、横並びの人間を育てることに躍起になっている。
本当はここを何とかしなくてはいけないのですが、現状は、規制の少ない予備校や塾、そして大学がその任を負ってしまっていると言えるのかもしれません。

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