予備校の選び方

予備校のうたう”合格率”を信じてはいけない理由

予備校の言っている合格率は、信じてはいけません。
これには本当に嘘が多い。
どう考えても、8割や9割の、ましてや100%の生徒が、特に医学部の場合、合格などするわけがないのです。

ある顕著な例をお教えします。

医学部専門のD予備校に15人の生徒がいました。
話は脱線しますが、1年で15人の生徒で商売が成り立つのですから、「どれだけお金を取っているのだ」という話になります。

それはさて置き、ある年の話ですが、実際に合格したのは3人でした。
5分の1ですから合格率はどう考えても20%です。

ところがここからが数字のマジックです。

合格した3人というのは、優秀です。
偏差値は65を超えています。
こういう生徒はいくつもの大学に受かるのです。
ここで、3人がそれぞれ5校に受かりました。
全部で15校受かったことになります。

もうおわかりだと思いますが、15人の生徒がいて、合格した大学の数が15校。
これで「合格率100%」になるのです。

あるいは、頭のいい子が、夏季ゼミナールとか合宿だけ参加したとします。
その子がどこかの大学の医学部に受かれば、たった1週間だけ在籍していた子であっても、それも合格です。
その子が東大の医学部に受かれば、当然、「東大の医学部に受かりました!」と宣伝するわけです。
確かに、全くの嘘ではありません。
しかし、実は関東の予備校が発表する医学部合格者数を合計すると、医学部定員の10倍にもなるのです。
ここまでくると、笑ってばかりもいられません。

東京にあるM予備校では、14人の生徒で合格はたったの1人でも合格率85%。
またI予備校では100%の合格をうたっています。
そのマジックは、こうです。

1年間通った生徒に聞いた話です。
全体40〜50人中、合格できそうな順にクラス分けをするのです。
それでAクラスは100%合格。
その数字を宣伝します。
Aクラスにはもともと、合格しそうな4〜5人を割り当てたのですから、100%も当たり前なのです。

いずれにしても、大半の予備校の合格率はデタラメか、何らかの数字のマジックがあると言っても過言ではないわけです。
その辺の事情は、あちこちの大学や専門学校がうたっている「就職率100%」と似ているわけです。

私が作ったTMPS医学館も、設立当初は生徒がとても少ない状況でした。
そこで医学部だけでなく、薬学、看護学、獣医学、歯学志望の生徒も募集しました。
それで何とか10人程の生徒が集まりました。
そんな状況でしたので、合格率は実際、高かったのです。
それで80%とか90%という合格率を掲げました。
数字のマジックはありませんでした。
1人か2人が落ちただけだったのです。
もっとも、その1人か2人が医学部志望の生徒でした。

その後、医学部志望者が増えてくると、合格率はどんどん下がっていきました。
ところが、周りの予備校の合格率は変わらずどこも90%以上なのです。
「おかしいな」と思いました。
私の予備校では、(私の信条として)どうしても嘘は書きたくありませんでしたので、結果、合格率を出すのをやめるしかないと結論付けました。
すると、親御さん方は、電話で「お宅の合格率は?」と必ず聞いてくるのです。

これは営業面では痛手です。
しかし、嘘は嫌ですし、本当のことを書いたらますます印象が悪いから仕方がありませんでした。
でも、予備校の合格率にそんな違いがあるなんてあり得ないことですし、あんなにすべての予備校の合格率がいいならば、何であれほどたくさんの医学部浪人生がいるのかと悩みました。
そのうちに、ここで説明したようなマジックが当たり前なのだということを知るようになったのです。

結論を言えば、どの予備校であれ、平均的な合格率は2割5分からせいぜい3割です。
それでも独学に比べれば合格率は上がります。
それだけ昔に比べても試験問題は難しくなっています。
それを短期間で攻略できるまでになるには、確かに予備校のテクニックも必要なのです。
ただ、そのテクニックと本当の勉強を教えてくれる優秀な講師は、極めて少ないということだけは確かです。

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