保護者向け

予備校は子供だけでなく、時には親をも教育する

親の役割の一つが、子供の立場に立って一緒に考える、また一緒に行動してみることです。

「お父さんはお前の成績が上がってほしいけど、でも何のために勉強するのか考えてみようよ」とか、「世の中にはこれだけいろいろな職業があるんだよ。それらはこんな長所と欠点があったりするので、最後は自分自身がこの世の中で進みたい方向を決めて、自分で生きていかなければいけないよ」「その方向の助言はいくらでもするよ。でも決めるのは自分であり、生きるのも自分なんだよ」といった具合にです。

これだけのことをなぜ、直接向き合って子供たちに言わないのでしょうか。
仕事で忙しいのでしょうか?
家事で忙しいのでしょうか?

私の予備校に、ある男子学生がいました。
彼は、とても感じのいい青年で、勉強にも一生懸命取り組んでいました。
しかし突然、何かと理由をつけて予備校を欠席するようになったのです。

私は、彼に聞いてみました。

「お父さんに褒められたことある?」  
「うん、一回ある。柔道で県大会に出た時に、『偉い!』と言われた」  
「それくらいしかないの?」  
「うん」
「そうか。じゃあ、今、どう思っている?」  
「いつかまた、同じことを言われたい。だから頑張ってみる」

私は本当に涙が出そうでした。

それから私は彼に、まず第一歩として「嫌だなと思うこと、面倒くさいなと思うことに挑戦すること」を、時間をかけて強く勧めました。
練習の厳しい柔道で頑張った経験があるのですから、彼にはそれができるはずだと信じました。
柔道の話には、彼は目を輝かせます。
自信があるのです。
そして、自分のことを人がどう見ているか顔色をうかがうのではなく(これは無意識に父親の顔色を毎日うかがっていたからです)、自分がどうしたら気持ちが充実するのか、またどうすればすべてに自信を持てるようになるのかを一晩中話し合いました。

自分の部屋にこもれば、その場は楽になるけれども、だんだん寂しくなるし、勉強もしたくなくなるし、宿題をしていないような気持ちになることを、彼は切々と他人である私に4時間もしゃべったのです。
親と20年一緒にいて、そのような時間を取ってもらったことが一体、あったのでしょうか。

そして、彼と二人で決めました。
第一歩として、「嫌だなというほうを選択して生きてみよう」ということです。
だから、人がどう見ようとまず一緒に予備校に行こう。
そして自分のために勉強してみよう。
そしてその勉強が今日はどこが楽しかったのか私に話してほしい彼はとても素直に「頑張る」と言ってくれたのです。

その彼が2年後、某大学の医学部に入学しました。
私は彼の白衣姿を想像し、涙が止まりませんでした。

若者はみるみる間に成長します。
何と素晴らしいことでしょうか。

この子の場合は、親の放任と過保護が原因で、世間に向き合う準備ができていませんでした。
私が彼を説得している間、親はどうしていたか。
「この予備校で本当にいいの?」と何回も本人に向かって言っていました。
つまり、親こそが、人のせいにする習慣の持ち主だったのです。  

このように「親からまず教育しなければ」と思うことも少なくありません。
もちろん、親にも注文をつけます。
「お母さんもお父さんも、体当たりでやってください。怒るのも教育なのです」などとよく言います。
ただ、感情に任せて怒るのではなく、ちゃんと理性的に怒ることが大切です。

「ここは怒ってあげなくちゃ」というタイミングにはしっかりと怒らなくてはいけないのです。
それも親の義務です。
親が「面倒だな。子供と喧嘩などしたくないな」と避ければ、子供も同じように嫌なことを避ける人間になってしまいます。

ただ、繰り返しますが、感情で怒っても意味がありません。
理性的に、相手の反応を観察しながら怒るのです。

多くの親は怒らないか、感情的に怒るかのどちらかです。
感情で怒る場合は、価値観もどこかにいってしまいますし、子供に対する説明もありません。
ただひたすら子供を責めます。
「お前はダメだ」と言い続けます。
それでいて「結果を出せ、早く出せ、何をやっているのだ」とせっつきます。
それでは子供の感情はズタズタになってしまいます。

たとえ世間は待ってくれないとしても、親くらいは長い目で見て、待ってあげる寛容さが必要なのではないでしょうか。

とにかくちゃんと子供のことを見てあげて、向き合っていくことです。
どんなに忙しくても、そこをなおざりにしてはいけません。
できるだけの時間を子供に注いでほしいのです。
親が怠ければ、子供にもうつります。
それが親の後ろ姿なのです。

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