保護者向け

「親の仕事ぶりを見せるのも愛情表現の一つ」である理由

理想的な親子関係の前提は、父親がちゃんと子供に愛情表現をしていることだと思っています。
なおかつ、自分の仕事ぶりも見せている。
それが理想だと思います。
 
特に医者などはそうあるべきです。
 
サラリーマンの場合は仕事ぶりを見せる機会を作るのも大変でしょうが、特に自分で医院などを経営しているのであれば、それは比較的たやすいことだと思います。
もちろん、職場見学だけが仕事ぶりを見せるということではありません。
自分の仕事、自分が息子や娘に継がせたいと思う職業について、その意義や難しさ、やりがいについて語る。
自分が今日、経験したこと、見聞したことを語ることも重要でしょう。
 
帝王学という言葉があります。
そこまでは考えないまでも、「自分の子供なのだから医者になるのは当たり前だ」などと考えてうまくいくという時代ではありません。

その職業がなぜいいのか、なぜ継がせたいと思うのかを、じっくりと語って、いわばプレゼンをして、子供の意思で「なりたい」とコミットさせるべきなのです。
もちろん、その場合に「儲かる」とか、「もてる」とか、「組織の歯車にはなれないから」などという理由を前面には出さないでほしいですね。
そうではなく、立派な医者になってもらうための教育をしてほしいのです。
 
そうした職業意識、倫理観がなければ、勉強にも身が入らないというのは必定です。
なぜ苦労するのか、その苦労の先にいかなるやりがいが待っているのかがわかって初めて、人は一生懸命になって、さまざまなものを犠牲にしてでも、その夢をつかもうとするものだからです。
 
また、「愛情表現」などと言うと、否定する父親が多いでしょう。
照れるかもしれません。
特に男が男に愛情表現などできない。
あるいは娘に愛情表現をするのはおかしい、などと考える人もいるようです。
 
それは少し、誤解しています。
親子の愛というのはそういうものではありません。
ましてや照れる対象でもありません。
 
その愛情表現も、あえてやろうとすると、不自然なものになるでしょう。
ただスキンシップに訴えるのが愛情表現ではありません。
そこを間違えると、親子といえども気持ち悪がられることもあるでしょう。
 
そうではなく、歌の文句ではありませんが、スムーズに愛情表現をするためには、簡単なことで、ただ「愛すればいい」のです。
本当に子供を愛し、しかもご自身の職業に誇りを持っていれば、何の問題もなく、正しい接し方ができるはずです。

愛するということは相手を信頼しつつ、それでいて何かと気にかけるということです。
信頼をしているのですから、心配しすぎるということはありません。
放任主義にもなりません。
しっかりと見ていて、必要に応じて声を掛ける、肩を抱く。
そうした自然な感情表現が重要なのです。
 
そうすれば、愛情に加え、必ずや子供にも親に対する尊敬の念が出てきます。
 
心配ならば、一緒に寝て、起きて、歯を磨いて、洗顔をして、一緒に風呂に入ればいいのです。
それを面倒臭いと怠る。
そういうところだけ、自分でやれとふんぞり返ってしまう。
それがなかったから、大きくなってもスキンシップを求める人間が多いのです。

私は、会社が給与を銀行振り込みにしていることもよくないと思っています。
そう思うから、当予備校では、ボーナスに関しては現金を手渡しています。
現金の入った給与袋を持って帰れば、子供の前でお母さんにそれを渡すことができるからです。
 まさに稼ぎです。
そうすれば、奥さんも素直に「ありがとう」と言える。
それを見て、子が育つというわけです。
 
まあ、それはさて置き、父親が自分の言動をチェックしてほしい点はたくさんあります。
 
たとえば、子供と今の自分を比較しないことです。
昔の自分を振り返って、それで比較してほしいのです。
 
今のお父さんはたとえば医院の院長であったり、大学の教授であったり、……そうでなくても立派な社会人で医師であるわけです。
医師でない方もいるでしょうが、それでも立派なビジネスマンなどであるはずです。
そうした存在と、高校生や浪人中の子供を比べても意味がありません。
 
朝もちゃんと起きる。
約束は守る。
それは社会人としては当たり前のことですが、その目線で学生と比べても仕方がありません。
自分も学生だった頃を思い出して、その立場に立って、子供について理解するところは理解し、その目線で、同じ土俵に立って、その時の反省も含めて指導すべきは指導する。
アドバイスをすべきはアドバイスをするのです。
 
学生の頃を思い起こせば、自分だってだらしなかったであろうし、寝坊で、今よりももっといい加減だったはずなのです。
そこを反省したり、気づいたり、直したりして今の自分があるわけです。
成長とは、そういう段階を踏むものです。
子供にはその段階を見せないで、結果だけを見せて批判したり、当たり前を押し付けたりしても、敬遠されるだけです。
一般論、いわゆる正論で子供を押さえつけようとしても、それは詮無いことです。
 
一方、子供だって、そんなことはわかっているのではないでしょうか。
ただ、わかってはいるけど、実行できない。
持続できない。
そういうことが多いはずです。
 
それをわかっていれば、たとえば「じゃあ、俺が起こすから、一緒に起きてみよう」などと言うことができるはずです。
そうした行動はせず、アドバイスすらなく、ただ叱責するというのでは、マイナスの効果しか生み出しません。
それでは誰の心にも届きません。
一緒に何かをするという行動を大事にすれば、自ずとそこに愛情をも感じることができるはずなのです。

わが子を叱る前に、なぜ自分が怒っているのかを、一度立ち止まって考えてください。
本当に子供のことを考えているのか。
それとも単に世間体を気にしているのか。
はたまたそれは面子なのか。
そのことを顧みた上で、本当に子供のことを考えた発言をしてほしいのです。

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