今の学生たちを見ていてつくづく感じることがあります。
これは大学で教鞭を執っていたときのことですが、授業に受講者が100人いるとすると、せいぜい10人、1割くらいしか真剣に聴こうとしていないということです。
できる限り、学生たちの目が輝くような授業をしようと心がけてはいるのですが、私からはそう見えます。
それは「あなたの授業に魅力がないからじゃない?」と思うかもしれません。
手前味噌になりますが、実は大学でも専門学校でも予備校でも、まずまずトップの部類で学生たちを集めている教師のひとりであったことを自負しています。
そんな私でさえ、そうなのです。
授業後に質問をしてくる学生などほとんどいません。
今の男子学生は大きく2つに分類されると思っています。
一方は顔立ちも良く、目鼻立ちも整っていて細く、しゃべる言葉もそれなりに品の良いタイプです。
もう一方は、ずんぐりむっくりで、少々太めで、ゲームに夢中、またはフィギュアを集めるのが好きな、おとなしくて目立たないタイプです。
昔と比べると、やんちゃ者は極めて少ないようです。
私たちの時代は3つに大別できました。
最初は、よく勉強をする、いわゆる真面目タイプです。
彼らは見るからに真面目そうです。
ところが最近では、このタイプの顔が変質者として「今日のニュース」に出てくるタイプになっているのには本当に驚かされます。
「この人がねえ~。見えないなぁ~」と思わず言ってしまいます。
次はお坊ちゃまタイプ。多いのはノンポリ型、または天然。
そして、この2つのグループ以外は不良とはっきりしていました。
問題は、現在の予備校で観察していると、前述した二大別のいずれも同じなのですが、ほとんどは、「生きる活力を感じない」生徒ばかりだということです。
天才型もやんちゃ型もほとんどいません。
もっとも、学校当局も、すでに10年以上前からこのことに何となく気がついていました。
いわゆる「ゆとり教育」の枠組みの卒業生などからして、徐々に怪しくなってきてしまったので、そうした現状を打破しようと「総合的な学習の時間」などと称し、よくわからない「心のノート」などのような教材を持たせるようにしたわけですが、その結果、ますます草食人間ばかりが目立つ社会になってしまいました。
私の周りでも、いくつになっても独身で親と一緒に暮らしていたり、結婚して子どもをつくっているとしても、本人は働かず、親に面倒を見てもらったりしている若者がごろごろいます。
彼らを見ていると、人生は有限であるのに、まるで無限であるがごとく、無気力に何もしないで親の生活の中に浸っているのです。
君たちが、そうした類でないことを祈るばかりです。
日本は豊かだから、いくつになっても親が子どもを養える。
そうした富裕層はまだ多いという理屈はわかっています。
それは、ある意味では良いことかもしれません。
しかし、そんな状況に、私は危機感をもっています。
なぜならば、受験勉強に対する向き合い方に直接影響が出ているからです。
これまでの予備校は入れ物(教室)をつくり、そこにプロの先生を呼んで、教科を講義すればそれで成立していました。
ある意味、昔の学生のほうが、親離れが早かったのでしょう。
つまりは自立していたから、それで良かったのです。
ところが今はそうではありません。
私生活からすべてこちらが親代わりにならなければ動こうともしない学生が多い。
甘えん坊で、常に誰かに頼っていないと倒れてしまう。
それこそやる気がほとんどないのです。
やる気の出し方がわからない学生たちが多過ぎます。
親に甘えず、自立心をもて!
その理由の一端というか、主因は、大人たちにあります。
子どもたちは大人たちの行為の被害者だと私には思えて仕方がないのです。
子どもは、親の鏡です。
親や教師などの大人が、その生き甲斐や職業倫理感、人生の指針、仕事による自己実現の醍醐味などを示していないのです。
安易に、「最近の若者は~」などと批判はしますが、多くは自分の人生にも満足しておらず、それでも片意地張って、親の強権を発動して、自分の(本当は自分自身、信じているのかどうかすら定かでない)道理や理屈を子どもに押しつけようとしているに過ぎないことが多いと思います。
ただ、それだけです。
本当に大事なものは、ちっとも示せずにいます。
自分たち自身が暗中模索だからです。
だから多くの若者は、どこに向かっていいかもわからない。
自分の心のもっていきようがつかめず、人によっては無気力になり、あるいはあらぬ方向に走り出す。
時には狂気すらはらんでしまう。
怪しげな新興宗教、スピリチュアル系の集団、あるいは自殺願望サイトなどに関心を示す若者も決して少なくありません。
総じて、若者は大人たちの被害者なのだと私は思っています。
親がダメならば、頼りになる師を見つけなければいけません。しかし、それは簡単なことではありません。
いずれにしても、まず大切なのは独立心です。
もちろん、中には立派な親もいますが、そうでないとするのであれば、親なんて所詮そんなものだから、新しい価値観を求めていろいろな本を読んだり、さまざまな人に出会うチャンスを自ら探してほしいと思います。