勉強には当然、集中力が必要です。
その集中力が生涯の中でも最大限に要求されるのが受験前1カ月です。
個々の学生の集中度は、私たち教師には手にとるようにわかります。
たとえば授業である説明をします。
ある問題をいかに捉えて考えるべきか、といった説明をするとします。
答え合わせなどより、よっぽど大切な内容です。
なぜならば、そこがわからなければ、ある特定の問題の答えは覚えていたとしても、そこから派生、波及するさまざまな問題にまったく対応できないからです。
教師、とくに予備校や塾の講師は当然、入試問題を意識しながら教えていきます。
どの参考書にも書いてあるような部分ではなく、もっと根本的な部分、つながりであったり、一見、枝葉末節に見えるけれども大切なポイントです。
答え合わせではなく、まさに授業をしている、大切な講義をしているそのときに、真剣に集中してその話を聴ける学生と、聴けない学生がいるのです。
私たちは教えるプロですから、その教室に何十人いようとも、すぐにその学生を二分して把握できます。
その見分け方は簡単です。
集中して聴いている学生は、微動だにせず、私を見ています。
しかし、そうでない学生はやたら動きます。
無意味にノートやテキストのページをめくってみたり、あらぬ方向を見つめていたりします。
明らかに他のことを考えているわけです。
受験勉強のポイントを理解してきた学生や、そもそもできる学生は、前者です。
どこが大切なポイントかがわかるのです。
そして、両者の間では、その後の成績の伸びはものの見事に違ってきます。
一にも二にも、大切なのは集中力。
そして好奇心。
全体を見渡す力です。
それが良い習慣、あるいは悪い習慣を生みます。
伸び盛りの学生、あるいはそもそも頭の良い学生は、ひとつの問題を見るにも、くまなく見ます。
問題文を注意深く読むのはもちろん、グラフもまんべんなく必死に吟味します。
そうした集中力が常に重要です。
これは意識して行うというよりも、習慣化が大切です。
この習慣がないと、どうしてもいい加減になりがちです。
問題をじっと凝視して、集中しようとするのですが、すぐに集中を解除してしまいます。
すぐに気が散って、違うこと、どうでもいいことを考え始めます。
常に問題に集中しないわけではありませんが、途切れ途切れの集中では理解力や判断力はつきにくいものです。
こうした状況を私は、目が泳ぐのと同じ趣旨で、「頭が泳ぐ」と言っています。
頭が泳げば、成績は上がりません。
問題なのは、本人が意識して頭を泳がせているのではなく、それこそ習慣で、勝手に頭が泳いでしまうのです。
だから、治しにくい。
今、現在の問題に集中する力が弱いのです。
これでは当然、受験には臨めません。
まずは現在の問題に集中するように心がけてみましょう。