こんなエピソードがあります。
当校に通っていたある有名人の甥の話ですが、その叔父さんがやってきて、いきなり、「長澤さん、一次を通れば二次はお金が動くということは知っています。その一次を何とかならないですかね? お金だったら、何とでもしますから」と言うのです。
1年で何とかなるかならないかという話を通り越して、お金で成績が買えるといまだに思っている人もいるのです。
それはなぜかというと、詐欺師まがいに安請け合いをする輩がいまだに横行しているからです。
実は昔、いろいろな医学部専門予備校で講師をしていたころ、ある医学部予備校の校長が、「どこの大学の医学部でもいいから、一次試験を通った生徒(の親)をどんどん紹介してください。私の伝手で二次は何とでもしますから」と言われたことがあります。
思わず、「そんなことができるのですか?」と聞き返しましたが、「できる」と言い切ります。
「ただもちろん、お金はかかります。5000万から1億を超す場合もある」と平気で言うのです。
「一億だったら、3000万はキックバックする」とも言っていました。
これはれっきとした詐欺です。
後で調べたら、やはりそのご仁は一度、詐欺罪で逮捕されていました。
それでも懲りずにまだやっていたのです。
ちなみにそのご仁、まだある医学部専門予備校の校長です。
そうした話に引っかかりそうな親も少なくありません。
「先生、実は私はロータリークラブである人から紹介されて、この人にお金を積んで頼めば 大丈夫と言われたのですが、この人をご存じですか?」と聞いてくる生徒の親も何人かいました。
そんな場合は、はっきりとその親に「やめなさい」と注意します。
こうした話は、卵が先か鶏が先かという話と同じです。
お金で何とかできるはずだと思い込んでいる親がいるから、詐欺師も生まれる。
詐欺師がいるから、まだそんなことを信じてしまう親がいなくならないという構図です。
では、実際にお金が動いて何とかなるなどということがあるのでしょうか。
本当のことは私にもわかりません。
ただ、過去はともかく、医学部でなおかつ一般入試の場合は、最近ではそうしたことはほぼないと思っています。
そんな話も今は入ってきません。
「あの子が合格できたというのはおかしい」といった番狂わせも聞きません。
しかし、それは一般入試の場合です。
これが各種推薦となるとかなり怪しいと考えています。
実際に経営者の姪だったり、甥だったり、明らかに力不足と思われる学生が何人も合格しています。
まともに一般入試で合格した学生たちに聞いても、「あんなに英語もできないのに、なんで入学できたのだろう」と思ったりする学生が何人もいたりするそうです。
聞いてみると、そういう学生はほとんど推薦なのです。
どうやら、ほとんどの大学でその兆候があるようです。
推薦枠には裏があります。
ですから私は、推薦は信用していません。
世の中の大半の大人たちは、一般入試の厳しさよりも別の基準があってもいいはずだと考えるのですが、これだけは知っておいてください。
推薦が増えると、裏口入学が確実に増えてきます。
正直者が損をすることになるのです。
私は一所懸命勉強している生徒を見ていると、推薦は大反対です。
堂々と苦しんで勝利をつかみ取ってください。
一般入試では、お金で成績は買えない。
合格も買えない。
努力するしかないと、わかってください。