保護者向け

勉学における正しい習慣、間違った習慣

字が汚い、間違ったらすぐに消してしまう。
一見まじめなようですが、これは学ぶ姿勢としてはいただけません。
受験勉強では、今その問題に答えられるかどうかよりも、その問題を間違えることで、なぜ間違ったのか、どう間違ったのかを反芻し、次に備えることのほうが重要です。

ところが最近の子は、間違えるとすぐにリセットしようとします。
ノートの字が汚くて読めない、ノートの整理をしすぎる、逆に整理だけに集中しすぎている、すぐに消してしまう、これらの子供たちは成績が伸びません。
ですから、それをさせないようにするのも大切なポイントなのです。

今後はますますパソコンが学習の場に入ってきます。
そうなると、消すのもリセットもさらに簡単です。
試行錯誤というものが否定されていく結果になると感じています。
全体像も見通しにくくなります。
企画を考えるなどの際も、フリーハンドで絵を描きながら考えていくのは非常に有益な方法ですが(もちろん、パソコン上でもそれができるのですが)、パソコンを使うと、そうした右脳的な発想方法よりも、どうしても文字中心の左脳的な思考方法に偏ってしまいがちのようです。

特に思考力を身につける、学ぶ姿勢を身体に染み込ませることが重要な時期は、そうした学習方法はマイナスです。

今は、皆、こうした傾向もあって怠け癖がつきやすく、すぐに楽な方向へ行こうとします。
パソコンやケータイを多用すれば、辞書を引く機会も激減します。
私の所では授業で、わざと辞書を引かせて、そういう癖をつけるようにしています。
怠け癖が強い場合は、そこから始める必要があります。
必ず、目の前でやらせます。

黙読も実は間違った習慣です。
問題を渡します。
皆じっと読みふけります。
だんだん顔をペーパーに近づけていって、どんどんと近視眼的な見方になるものです。
これは生理学的にもよくないはずです。
そういう生徒は、やはり成績もよくありません。

人の記憶は側頭葉が司っています。
その側頭葉は聴覚と連結しています。
そのため、聴覚から入るものに比べて、入らないものに対してはどうしても反応が鈍くなります。
ですから、自分の耳を通して側頭葉に聞かせなければいけないのです。
目で問題を見ながら声に出して耳に聞かせる。
そうすれば記憶力もよくなる。
早く覚えることができます。
さらに書けばベストです。
書くことも記憶力を強化します。
原点はそこです。

楽をすればするほど、成長は低レベルで止まってしまいます。
ですから、そうした面倒くさい作業を子供のころから身につけさせることが大切なのです。

もう一つ、決して漫画は否定すべきものではありません。
私の予備校からほとんど満点の成績で国立の医学部に合格した子がいます。
その子は、漫画の『日本の歴史』シリーズが大好きで、それで歴史に興味を持って、それがきっかけで学ぶことが楽しくなったと言っていました。

「漫画がおもしろい」と言うのであれば、漫画を与えるべきなのです。
きっかけは何でもいいのです。
何でも世の中の間違った一時的な固定観念でもって子供を怒ったり、楽しんでいるものを取り上げてしまうのではなくて、子供が何が好きなのか、それを見極めて、そこを最初のテコとして育て上げるということが必要なのです。

こうした生活習慣は、学ぶ姿勢と密接に関係することですが、本来、予備校で教えるのでは遅すぎます。
小中、いや、幼稚園から教えるべきことなのです。
そこで間違えると、集中力のない、飽きっぽい子が育ってしまうのです。

一番大切な部分ができていない子を預かって、何とかしてほしいと言われるから、こちらのコラムでもご紹介したように、時には寝食をともにすることも辞さないという覚悟が必要になるわけです。
失礼ながら「この親に預けていてはダメだ」と思うから、お預かりするわけです。

そうした大げさな話でなくとも、知らず知らずに家族が勉強の効率を妨げているということもあります。
たとえば、「ご飯ですよ」とか、「お風呂ですよ」とかと平気で声をかける。
これはダメです。
「音楽なんか聞いていないで、勉強しなさい」。
これもアウトです。

人間には交感神経と副交感神経というものがあります。
副交感神経を働かせると勉強は進みません。
そのため工場では窓を高くし、外が見えないようにします。
これは外に注意がいって、集中力が散漫になるからです。
また、電灯の明るさは強めにします。
その上で、できるだけ皆の知らないような音楽を多少大きめの音量で流すのです。
そうすることで交感神経を働かせて作業に集中させるのです。

逆に食事をした後や、お風呂に入った後では、副交感神経が働き、身体に休めと命令してしまうので、眠くなるのです。
音楽は、自分の好きなものではない音楽をガンガン流す。
光もできるだけこうこうと明るくする。
そうして、交感神経を刺激してやるのがいいのです。
「こんなに明るくして、もったいない」とか「音楽がうるさい。これでよく勉強ができるわね?」などと言いながら、「風呂に早く入って」「ご飯冷めるわよ」では、「早く眠れ」と言っているようなものです。
「ご飯はここに置いておくから、勉強が終わったら食べなさい」「お風呂は寝る前に入って、体をリラックスさせて、ゆっくりお休みなさい」

そう勧めるのが正しいのです。
多くの人は、生活習慣の作り方からして間違っていると言っていいでしょう。

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