勉強法

受験問題、解答力アップの秘訣【前編】

さて、1冊で基本、中級、上級が全部入っている問題集を解く際の心構えを今一度、肝に銘じてください。

上級問題に神経をとがらせて勉強する必要はありません。
難問を時間をかけて解いたとしても、同じ問題が出題される確率は10万分の1です。
飛ばしたほうがいいくらいなのです。
私なら、「その時間に間違えた基本問題を早く頭に入れなさい」と言うでしょう。

「使っている問題集を持ってこい。私がやるべき問題を取捨選択してやる」と、よく自分の学生たちに言います。
持ってくると、実際にかなりの問題に×をつけます。

するとどうでしょうか。
成績の良い学生は「こんなにやらなくていいんだ! ラッキー!!」と素直に喜びます。
それに対して、成績が中くらいの学生、偏差値55くらいの学生は、「本当にやらなくていいのですか?」と不審そうな顔をします。

後者の学生は要領の悪い勉強をいつもしているので、その癖から簡単に抜けられない。
つまりは完璧にやらないと不安なのです。
難しい問題が解けないとすぐに投げ出すから、問題集を最後までやるなどということはありません。
そのくせ完璧主義だから、やらなくていいと言われても、それはそれで不安になる。
投げ出すくせに、飛ばせない。
おかしな話ですが、そんなものなのです。

では、問題集のいらないところをチェックしてくれる先生がいなければどうしたらいいのでしょうか。
まずは市販されている問題集の基礎(基本)編を買ってください。
それを、答えを見てもいいから解きながら覚えていくのです。

そうする中で、答えを見てもまったくわからなければ飛ばして進めます。
そこが肝心です。
答えを見てもわからない問題を、15分も20分も考えるのはムダなことです。
今の君の力ではそこは理解できないということを知るのも勇気なのです。

勉強をしていない人間ほど、ひとつのことを教えると、それだけで関連性のある問題は全部できると思ってしまいます。
実はどんな教科でも、問題の難度が上がるにつれて、実はいろいろな知識の総合力がないと解けない問題が増えていくのです。

実際の医学部の受験問題で、そのことを説明したいと思います。

問1 鳥類が排出する窒素成分は「a」であり、また、ヒトは「b」を排出している。「a」「b」を答えよ。

問2 陸上動物にとって「a」「b」で排出するということはどのような意味を持っているか。

問3 ヒトの「b」による排出はどのような経路で排出されるのか。以下の語句を入れ、150字以内で論述せよ。(消化酵素、腎臓、肝臓、オルニチン回路、アミノ基)

問1の答えは、aが尿酸、bが尿素です。
これは排出器官として、生物では腎臓の範囲で勉強します。
窒素成分は、水生生物はおよそアンモニアで排出し、両生類や哺乳類では比較的毒性の少ない尿素で排出し、爬虫類、鳥類も毒性の少ない尿酸で排出すると、教科書でも参考書でも習います。

しかし、それだけを勉強していたのでは、問2、問3は果たして解けるでしょうか?
それは無理でしょう。

問2の答えは、「毒性の少ないものに変えることができたから生物は、水中から陸上に進出できた。つまり、陸上は乾燥しているので、生物がアンモニアを体内に残したまま陸上に出てくれば濃縮され、細胞が破壊されてしまう。あくまでもアンモニアを尿素、尿酸に変えることができたから、生物は水中から陸上に上がってくることができた」というものです。
つまり「生物の進化」まで習わないと、この問題は解けないのです。

問3に関しては、さらに難しい。
鳥類が尿酸、ヒトは尿素と覚えているだけでは、まったく答えようがないでしょう。
まず、ヒトの尿素はどこから来るかを知らないとダメです。

それは、摂取している食品中のタンパク質から来ています。
これに比べて尿酸値の尿酸は自分の垢からできる。
いわば自分のDNAからできるから非常に厄介なのです。
つまり卵、イクラ、たらこなどを摂りすぎると、一粒一粒がDNAだから、それだけ多くの尿酸が産出されてしまうことになるのです。

もっとも、それだけでは150字も書くことは至難の業でしょう。
何が必要なのでしょうか。
消化酵素を結びつけて考えなければいけないのです。

答えは、「ヒトはタンパク質を分解するのに消化酵素が必要だ。その消化酵素によって、タンパク質の最小単位であるアミノ酸にまで分解する。その後、アミノ酸からアミノ基が外され、有機酸とアンモニアに酸化し、そのアンモニアが肝臓のオルニチン回路に入って、尿素に変わり、さらに腎臓に運ばれ、膀胱にこし出され、尿と一緒に排出される」

ここでは、タンパク質からアミノ酸を導くために、化学の知識も必要になります。
消化酵素を使ってタンパク質からアミノ酸にするのですが、アミノ酸から尿素の生成も、アミノ基とカルボキシル基とあって、炭素骨格の中心の有機酸+アミノ基でもってアミノ酸なのです。
私たちの場合、アミノ酸として小腸から吸収されるのですが、血管を通って細胞までいくと、そこでさらにアミノ基が外されます。
そうすると、アミノ基がNH2ですから、それが必然的にイオンとくっついて、NH3=アンモニアになってしまう。
だから、実は肉を食えば食うほど危険なのです。
戦後大腸がんが増えたのもこのせいです。
洋食化が進み、肉を食べる習慣が根付いたからです。

大きくは、このアンモニアが危険だから、尿素に変えているのです。
だから、肉を食べると産出されるアンモニアを肝臓に持っていって、解毒する。
オルニチン回路で尿素に変えられて腎臓に運ばれ、膀胱から捨てられるというわけです。

ここまで書くためには、それなりの知識が必要です。
消化酵素についても勉強しなければ理解できませんし、アミノ酸がアミノ基と有機酸でできているという化学構造も勉強していなければ答えは出てこないのです。

後編へ続く

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