偏差値40ほどの子は、中学から勉強をしていません。
少なくとも真剣にはしていない。
もちろん身についていない。
だから、そこからやり直しです。
二次関数の平方完成すら知らない。
それで偏差値65以上が最低線の医学部に受かるわけはないのです。
1年では到底無理ですし、2年でも難しい。
もっとも、大学の医学部に入るということは、通常で言っても当然、簡単なことではありません。
残念ながら多浪の学生も多いわけです。
一浪、二浪、三浪の子は珍しくもない。
成人をして、それこそ30歳に近い子もいる世界です。
焦ることはないのです。
じっくりと私生活の改善から取り組み、学ぶための環境が整えば、誰であれ、医学部合格も夢ではない。
実際に、そうすることで、むしろ効率よく勉強が進み、無理だと思った医学部に一浪や二浪で合格していった子もそれほど珍しいことではないのです。
現状がダメでも伸びる子の特性を再度確認してみましょう。
それはまず、自分の悪い習慣に気づき、意識してそれを直そうとする子です。
この場合は自立心がいい方向に作用し始めたと見ます。
もう一つのパターンは、先生や職員など、年上の誰かに抵抗感なく相談に行ける子です。
まだまだ他力本願であったとしても、そういう学生はそれまでの習慣、呪縛から逃れる用意ができたということを意味します。
特に男性の先生や職員に接触できる男子生徒は、前述したように、父親とコミュニケーションが取れている子です。
そうでないと、つまり、父親が厳格で近寄りがたい、怖い、尊敬というよりも嫌悪しているとなれば、その子は、ある割合で、いわば男性コンプレックス、特に目上の男性コンプレックスに陥ってしまい、近づくことも、ましてや自ら胸襟を開くということもなくなります。
親子の関係は、私がその子たちとかかわるまでに、少なくとも18年も続いてきたわけです。
そうした長い年月で培われた精神状態、あるいは生活習慣は、そう簡単には払拭できませんし、そうしたものが明らかに受験勉強に影響してきます。
私たちの対応の仕方はもちろん、ケース・バイ・ケースですが、まずは学生をしっかり観察し、そのタイプを見極めます。
この時点で親に問題があると思えば、アポイントを取って親に会いに出掛け、いろいろと話をさせていただきます。
親に問題がない場合も、学生のことが詳しく知りたくて親に会いに行くこともあります。
いずれにしても、両親と私たちが絶妙に連携をした時に、初めて効果が期待できるものだからです。
引きこもりになる子供も、相変わらず少なくありません。
引きこもれば、当然、授業にも出てきません。
ただ、一口に引きこもりと言っても、完全に自室に引きこもって、何年も出てこないというケースだけではありません。
生活のかなりの部分を自室で過ごして友達付き合いもしないといったケースもあります。
つまり、授業に出てきても、引きこもりの子というものはいるのです。
直行直帰で自室に帰ってしまうというタイプです。
そうした子も、放っておけばどんどんと引きこもりの度合いが強まり、そのうち完全なる引きこもりになってしまって、出てこなくなるということにもなりかねないでしょう。
そこを何とか阻止するというのも、私たちの大切な務めであって、そのためにもその子の両親とのタッグが必要になるわけです。
たとえ引きこもりがちな学生でも、好きな先生、好きな授業があれば、それを私たちは把握しています。
予備校の場合、多くの学生にとって先生は、多少なりとも憧れの対象であり、尊敬の対象だとお話しました。
ここは一般の学校とは違います。
だから、先生の一人が、その学生の尊敬を得られればしめたものなのです。
そうした相手に諭されれば、引きこもっていても、出てきます。
少なくとも、そのきっかけは得られるものです。
そのためには素早い情報収集が必要です。
それは両親との連携によってもたらされます。
引きこもった子供を、囲って守ってしまわれると救い出す手立てが失われます。
授業を休んでいても、引きこもっているのではなく、具合が悪いだけだと言われてしまえば、それが信じられなくても、疑う術がありません。
だから、丸投げとは言わないまでも、こちらに投げ出してくれるとやりようが出てくるのです。