偏差値が60を超える学生でも、1年間、それこそ脇目も振らず、勉強=カリキュラムに没頭しないと医学部合格は無理です。
予備校に通ったほうがいい最大の理由は、予備校の持つカリキュラムそのものです。
偏差値も高く、勉強する習慣が身についていて集中力も高い学生は、必ずしも予備校に通う必要はないのですが、やはり効率が違ってくるわけです。
予備校で切磋琢磨すれば、1年で受かるものが、独学では2年かかるかもしれないのです。
できる学生と普通の学生では、先生に対する質問の質も違ってきます。
できる学生は、その問題のいわば本質に関する質問をしてきます。
そういう質問も独学ではする相手がいません。
また普通の学生の質問の多くは、たった今、授業でやったことを改めて聞いてきます。
聞いていても一度ではわからなかったのではなく、結局は聞いていないのです。
だからまた聞かざるを得ない。
もちろんそれも問題なのですが。
さらにやっかいなのが、やはり偏差値55〜60の学生です。
彼らはある程度の学力を身につけているので、つい先へ先へと進みたがり上滑りする傾向が強いのです。
そこで、どんな質問をするかと見ていると、問題集を持ってきていくらか難易度の高い問題を指し、その答えを聞いてくるのです。
少しわかっているものだから、早く偏差値60以上になりたいと思う。
これが問題なのです。
そういう時は「君はこの問題ではなくて、(もっと基礎的な)こちらの問題を覚えなさい」と指導することにしています。
両親も本人も含めて、多くの人は勉強の成果というものは、リニアで右肩上がりに伸びていくと考えがちですが、それは間違いです。
成果は大きく下に膨らんだ放物線で上がっていきます。
基礎ならば基礎を 9 割以上理解して覚えないことには、加速度的に伸びていかないのです。
つまり、急カーブで上がっていく段階に至るまでには、長い道のりがあるということです。
決して近道はありません。
偏差値55というと、その9割覚えなければいけない基本をせいぜい7割5分しか覚えていません。
合格するためには9割5分の理解が必要ですから、7割や8割では絶対に医学部は受からないのです。
ところが7割5分、あるいは8割わかると、人間はわかったつもりになってしまうところが怖いのです。
たとえば、問題集を解いて、自分で答え合わせをします。
すると、いくつかの問題を間違えているにもかかわらず、答えを見れば「あ、そうだ」とすぐに理解できることが多いので、「大丈夫、これは知っている」と、まるで答えが合っていたかのように、自分に言い聞かせてしまうわけです。
それで 7 割 5 分が平気で 9 割正解に早変わりしてしまうのです。
次も当然間違える。
いつまで経っても頭に入らない。
そこが落とし穴なのです。
この領域を私はグレーゾーンと呼びます。
わかってはいるのだけど、覚えていない領域です。
多くの受験生は、焦るあまりに、このグレーゾーンを放っておいて、未知の真っ暗な領域に進もうとするわけです。
本来あるべき勉強方法は、そうではなく、グレーゾーンが真っ白になるまで繰り返し覚える。
そうすれば、それにつれて、徐々に真っ暗なゾーンがグレーゾーンに下りてくるのです。
そうやって先に進んでいくべきなのです。
そこが曖昧な子は、試験結果は常に「まあまあ」です。
できたかできないかが、はっきりしないのです。
しっかりと理解していないからです。
トップクラスの生徒はそうではありません。
どことどこは正解で、どこを間違えたか、試験後にはっきりと口にできます。
つまり、簡単に点数を計算できてしまうのです。