医学部受験について知る

定員と費用からみる 医学部受験の実態

医師を目指す皆さん、そして医師を目指す子を持つ皆さんに知っていただきたいことは、医学部受験の実態です。
全国の大学の医学部が募集する人数は、国公私立合わせても9000人を超えません。

比較してみましょう。
早稲田大学一校で1学年の人数は約1万人です。
医学部は全国すべて合わせてもその程度なのです。
いかに狭き門かということがわかると思います。
この枠を求めて押し寄せる志願者数は、2007年度時点で12.8万人。
これが2014年度には、約16.9万人にまで増加しています。
私立の場合の倍率は7倍程度から70倍程度までさまざまで、平均倍率は30倍弱です。
国立はどうかと言うと、センター試験で90%以上の点数を取らないと受かりません。
つまり、5教科7科目すべてで満点近くを取らなくてはダメなわけです。

それほど難易度が高い道です。
医者である親が、ご自身の医院を継がせるために、高校3年生になっていきなり子供さんをせかしても、それはほとんど無理な相談です。

国立大学の医学部は本当に高嶺の花です。
私立ではどうでしょうか。
残念ながら私立でも東大の文系レベルの学力が必要なことも往々にしてあります。
しかも用意しなければならないお金も大変ですし、入学金や授業料も高額です。

医学部を留年せずにストレート(6年)で卒業できたとしても、国公立大学であれば平均約350万円で済む学費が、私立大学の場合は(寄付を入れると)3000万〜1億円かかります。

つまり、裕福でなければ子供を医者にすることができないのです。
これに後継者問題をからめれば、医者の親は医者が多いことは当然の話と言えます。

そうではない庶民の家庭に生まれた子供たちは、狭き門なのはわかっていても、国公立専願で臨むしかなく、またこの構図は変わりようがありません。

ちなみに、医学部に合格するためには、予備校に通うことが必要とされます。
予備校に通えば合格できるというわけではないのですが、さりとて、独学ではほとんど合格の可能性はないと思ったほうがいいでしょう。

では、その予備校に一体いくらかかるのか。
予備校のうたい文句は150万円から400万円というところですが、入ってみると、あれもこれも必要と言われ、こちらも倍から高い場合は2000万円にまで跳ね上がるのです。

これに加え、小学校から高校までの学費ももちろんかかっています。
すべて国公立で200万円、すべて私立だと1000万円を超えるのではないでしょうか。
予備校にかかる金額が1000万円で高校3年生の時に通って、一発合格を果たしたとしても、すべて私立であれば、実に5000万円の資金が必要ということになるのです。

知っておきたい金銭面の優遇制度

では、お金のない家庭の子供には医者になる道は全く閉ざされているのでしょうか。
そうではありません。
わずかながら、道はあります。

というのも、地方に行けば行くほど、医者の数は足りないので、「将来的に自分たちの地域で働いてくれるのであれば、学費を貸与します」といった制度を作っているからです。
地元の学生に限定して推薦入試を受け付けている地方の国立大学もあります。
こちらは金銭面の優遇ではありませんが、一定の配慮もあり、入りやすいようです。

あるいは、自治医科大学、産業医科大学、防衛医科大学校を選択するという方法もあります。
自治医大や産業医大の場合は、在学中の学費の貸与制度があります。
また卒業後九年間、指定された山間部や離島などの病院に勤務すると、学費の返済が免除されます。

また防衛医大の場合は、自衛隊関連の病院、あるいは各部隊の医務室の医者になることを前提としていますが、在学中から公務員扱いなので、安いですが、給与をもらえます。
ただ、全員寮生活など厳しい面もあります。
9年間の勤務義務があり、それをクリアすると学費は免除されます。
ただ、これらの大学も偏差値は70以上で、狭き門であることに変わりはありません。

さらに、東京都地域医療医師奨学金(特別貸与奨学金)制度というものもあります。
これは将来、東京都の地域医療に従事する強い意志を持つ医学部生に、東京都が奨学金を貸与するという制度です。

たとえば2011年度に都が指定して現在も続いている大学と募集人員は、順天堂大学(10人)、杏林大学(10人)、東京慈恵会医科大学(5人)です。

その奨学金貸与金額ですが、東京都の場合、当該大学の修学金額、及び生活費用として月10万円、6年間でトータル720万円を貸与します。
大学において授業料改定があった場合は、その額も改定されます。

また、奨学金は、利子を付けて返済することが基本ですが、東京都が指定する医療機関に9年間従事するといった条件をクリアすれば、返済が免除されるケースもあります。
詳細は東京都のホームページで確認することができます。
その他の都道府県に関しても、似たような施策を行っているので調べてみると良いでしょう。

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