保護者向け

成績の上がらない子に共通するたった一つの特徴

多くの親は、子供の成績を結果論として見て、一喜一憂しています。
勉強の成果は放物線で表れますが、そこで大事になるのが、結果としての成績ではなくプロセスなのです。
子供は頑張っているのに、模試の成績だけを見てくどくどと怒っても意味がありません。
最終的に伸びる子供は、途中の成績ではなく、本人の中身が徐々に変わっていくものです。
そしてある時、突然その伸びが模試成績に表れるのです。

それが傍目にはわかりにくいだけです。
「ちっとも成績が上がらない」と騒ぐ親に、「大丈夫だから信用してほしい」と言っても聞 く耳を持ちません。
たとえば、成績は確かにずっとE判定(模試ではA〜E判定までの順位がある)できている生徒でも、実力は徐々についているのです。
それが成績として表れるには、放物線を辿らなくてはいけないのです。
基礎力が6割、7割でもダメ、たとえ8.5割でもダメ、9割まで待たないと結果は出てこない世界なのです。

模試の結果でも、すぐに文句を言ってきます。
せっかく本当の力は上向いているのに、「もう無駄だからやめろ」などと平気で言いだします。
そうやって、これから成績が伸びようとしている我が子を潰してしまうのです。

確かに、親にはわかりにくいことだとは思いますが、教師にはわかります。
たとえば、授業である説明をします。
問題と解答合わせなどという拙速なことではなく、この問題をいかに捉え、考えるべきかを説明します。
そこがわからなければ、そこから波及する問題に対処できないからです。
教師は当然、その背景にある入試問題を意識しながら話をしていきます。
実はどの参考書にも赤字で書いてあるような所ではなく、枝葉末節に思える部分が入試の当落を決めることが多いものなのです。

そのようなポイントについて、まさに説明しているような時に、真剣になれる子と、聞いていない子がいます。
それは目を見ればわかります。
後者はテキストのページをめくったり、何かを整理してみたり、あるいは明らかにほかのことを考えています。
成績の上がる学生、わかってきた学生はそういうポイントでこそぐっと引きつけられるのです。
そのように目つきが変わる学生は、その時の成績がページをめくったりしている学生と同じでも、最終的には必ず成績が伸びてきます。
30年以上も教職についていると、その違いが本当によくわかるようになります。

また、これはある意味、習慣の問題でもあります。
たとえばグラフがあります。
頭がいい学生、あるいは成績が伸び始めた学生は、必死になってそのグラフを見ます。
それこそ隅から隅まで、横軸も縦軸も必死に見るのです。
もちろん、問題文もじっと見つめます。
のめり込むのです。
その集中力が大切なのです。

そういう習慣がない学生は、いい加減です。
いったんはじっと見て、のめり込もうとするのですが、すぐに力が抜けてしまう。
集中力が続かずに、途切れ途切れになってしまうのです。
それは、観察していてわかります。
目の前の問題に集中しきれずに、違うことを考えだすのです。
「そうだ、このプリントをノートに貼ろうか」とか、「あれ?さっきの問題は……」とか、「何時かな?」とか、「あの人、咳をしている」とか。
もちろん遊びのことや彼女や彼氏のことを考えるなどは話になりませんが、ともかく目の前にある問題以外のことに、いわば頭が泳いでしまう。
それが成績にまで結びついてしまうのです。

そこに気づかずに、叱咤激励しても意味がありません。
よく教師の言う「やればできる」と無責任に言っても何にもならないのです。
本人がいくらやろうとしても、無意識に頭が泳いでいるのですから。
つまり、問題に集中する力が足りない。
すべては習慣ができていないからです。
それが、成績が上がらない根本的な原因なのです。

「すぐに与える」、その姿勢が子供から集中力を奪う

では、なぜそんな子になってしまうのでしょうか?
それも過保護が原因です。
子供のころから何かを与える。
それに集中して遊び尽くさないうちから、すぐに別のものを与える。
あるいは親が先取りして答えを与えてしまう、腕を引っ張って次に向かってしまう。
それを続けているから、自分で判断ができないだけでなく、何かに集中して、観察して、あるいは使いこなして、自分のものにしていくことができない。
そういう習慣が身につかなかったのだと思います。

そうではなくて、たとえば、おもちゃを1つ与えたら、徹底的に遊ばせる。
遊んで、遊んで、遊び尽くすまで、他のものは与えない。
そうすれば、たとえそれに飽きても、新しいおもちゃがなければ、何かで遊ぼうとするものです。そこから創意工夫も生まれます。

ところが、そのおもちゃに飽きてもいないのに、またすぐに次のおもちゃを与えてしまう。
いつの間にか、たくさんのおもちゃが散乱している。
そうなれば、心は散漫になる。
興味の対象も絞り切れなくなる。
それでわからなくなっているところに、両親やおじいさん、おばあさんがよってたかって、「次はこうするんだよ」と教えてしまう。
そうやって落ち着きのない子供に育ててしまうのです。

そうした子供のころからの習慣が、おもちゃを勉強に置き換えてもそのままでてしまうわけです。
また、そうやって身についた習慣からは、おいそれとは解放されません。

つまり、そういう子は、「ここがポイント!」と言った時にはすでに違うことを考えてしまっています。

逆に集中が切れない子は、「ここがポイント!」と教師から言われれば、集中しているので、その意味をすぐに理解して覚えます。
集中できない子は、「ここがポイント」と大きな声で言われると、とりあえず書きます。
しかし、頭が泳いでいますから、とりあえず書いただけでポイントの内容がピンとこないのです。
その繰り返しです。
だとすれば、「同じように授業を聞いていても、結果は大違い」というのも頷けることでしょう。

TMPS医学館 慈性 幸佑

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