問題集の昨今の傾向について解説しておきましょう。
私自身、頼まれてこれまでに何冊も問題集を書いてきましたが、どれが良い問題集であるかは一概には言えません。
一般的な問題集としては、基本、中級、上級の問題が全部1冊の中に凝縮されているものが多いです。
つくるほうは、それは大変な作業なのですが、そういうふうに頼まれることが多いのです。
もうひとつのタイプは、基礎編、標準編、上級編に分けて問題集にしてほしいという依頼です。
いずれにしても、その内容を見てみると、どれもこれも、それほどは変わらない。
大半が過去のいずれかの大学の入試問題の寄せ集めなのです。
それをどう料理するかの違いだけです。
それが今までの傾向だったのですが、最近少し違ってきました。
昔の問題集と違って、予備校の先生がかなり介入してきています。
そうなると、一見昔のままで、どれもこれも同じように見えるのですが、実は、どうしても個性が強くなる傾向があるのです。
先生それぞれに得意不得意があるからです。
たとえば微積分が得意だとか、数列が得意などと分かれます。
その自分の得意不得意に問題集の内容が振り回されて偏ってしまう。
大学の専攻によっても変わる。
それで個性が強くなり過ぎる傾向があるというわけです。
つまり、昔はどれも一緒だったからどれか良い問題集1冊に絞るという方法もあったのですが、今はそれではダメなのです。
数冊の問題集を使って、頭の中を平準化しないといけなくなってしまいました。
学生から、「学校の先生が問題集は繰り返したほうがいいと言うのですが、そうしたほうがいいですか?」とよく聞かれます。
昔ならば問題集自体の種類も少なく、どれを選んでも類似傾向があったわけですから、1冊の問題集を繰り返すことに意味がありました。
ところが今言ったように、現在の問題集を見てみると、かなり、問題が偏っている。
これでは、うかつに同じ問題集を繰り返すわけにはいきません。
この状況で言うならば、違う問題集の基礎編を3冊くらいやったほうがいい。
あえて問題集の名前を出すとすると、旺文社の『基礎問題精講』。
これは『標準問題精講』もそうですが、非常にレベルが高いです。
『基礎〜』は中級くらいで、『標準〜』には上級問題も含まれます。
だから腕試しにはもってこいなのです。
そしてそれをベースに、違う問題集もやります。
本書の主旨から外れますが、1年間で考えるのであれば、4月から始めて夏までに2~3冊、夏季に1冊、秋に2冊、12月からは総合問題をやるのがいいでしょう。
全部で最低でも5冊以上と言うと、皆驚きます。
なぜでしょう?
答えは簡単です。
完璧にやろうとするから驚くのです。
無心で黙々とやれば必ずできます。